アレルギー疾患とその他の最新治療

食物アレルギーおよび、食物経口負荷試験について

食物アレルギーとは??

食物アレルギー診療ガイドライン2012によると、食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」をいいます。
難しい言葉が並んでいますが、食物によって食べなくても不具合が起こることを指します。昔は食べることで蕁麻疹などの反応が起こることを食物アレルギーと定義していましたが、2012の改訂では、例えば触って目が腫れることも食物アレルギーに分類されます。

*免疫学的機序??って、よくわかりませんね。代表的な誤解されるものとして牛乳があります。よく、日本人はお腹が弱いので、牛乳を飲むと下痢をする人がいます。これは、乳糖という成分を分解する酵素の不足により、下痢が起きるものであり、免疫学的機序を介さないので食物アレルギーとはいいません。乳糖不耐症という異なる疾患です。

診断

食物アレルギーにおける原因検索のための検査には、皮膚試験、血液検査、経口負荷試験があります。このなかで一般的に使われているのは血液検査です。RAST法という、血中抗原特異的IgE 抗体検査によって卵、牛乳、小麦などのアレルギー値を知ることが出来ます。
皮膚検査には、プリックテスト、パッチテスト(毛染めなどの説明書によく書いてあります)などがあります。

食物経口負荷試験はゴールドスタンダードな診断方法で最も信頼性が高いとされ、診断には必須の検査とされています。しかし、食物経口負荷試験には欠点があります。食物経口負荷試験の最大の欠点はアナフィラキシーのような重篤な症状を伴う危険性があることです。約10%に、エピネフリン(エピペン注射の成分)が必要になるアナフィラキシーを誘発する場合があります。安全確保が重要であり、重篤なアレルギー症状の既往がある患者には行わない、少量から開始する、救急医薬品を準備する、医師の監視下で行うなどの配慮が必須です。さらに、食物アレルギー診療ガイドライン2012では食物経口負荷試験は、食物アレルギーの最も確実な診断法であるが、アナフィラキシーのような重篤な症状が誘発される恐れがあるので専門施設で行われることが望ましい、とされています。

当院の方針

私は病院勤務時代に多くの食物経口負荷試験を行ってきました。院長の経歴、論文執筆のところにも記載しましたが3年間で356件行いました。その危険性も知っています。エピネフリンも何回も投与してきました。正直、怖い思いもしています。しかし、それ以上に食べられないという非常に厳しい環境下で生活している保護者や、こどもたちの苦しさを少しでも緩和できるように当院では診断および解除のための食物経口負荷試験を今後も行っていきたいと思います。

食物アレルギーについてのQ&A

Q1乳児は検査をしても反応がでないので、出来ませんといわれますが本当ですか?

確かに、乳児は症状があっても血液検査では陰性となる場合があります。しかし、皮膚検査は血液検査よりも早い時期に確認できるアレルギー反応として、早期のアレルゲンの診断に有用であると考えられています。皮膚検査が陰性である場合は95%の確率でアレルギー反応が出ないことが分かっています。しかし、皮膚検査だけでも約50%は疑陽性の場合があるので、皮膚検査だけでは診断は困難です。(疑陽性とは、皮膚検査や血液検査で陽性の結果でも経口負荷試験をしてみると摂取可能であることです。すなわち皮膚検査、血液検査が間違っているということです。)

Q2血液検査だけで、卵の数値が出ていたので卵アレルギーだから除去をしてくださいといわれました。実際、今普通に卵焼きを食べられています。これって、卵アレルギーなのでしょうか?

除去の必要はないと考えられます。アレルギーの原因診断の検査法として、血液検査は広く普及していますが、経口負荷試験と比較して、疑陽性が問題となります。卵、牛乳、小麦、大豆などは約35-55%に疑陽性と考えられています。(疑陽性とは、皮膚検査や血液検査で陽性の結果でも経口負荷試験をしてみると摂取可能であることです。すなわち皮膚検査、血液検査が間違っているということです。)

Q3まだ乳児だから血液検査ができないので皮膚検査をしてもらいました。その結果、卵が陽性なので、3歳まで完全除去をしてくだいといわれました。本当に3歳まで完全除去が必要ですか?

まずは、その診断が正しいかどうかです。(Q&Aの1番を参照)。また、診断が正しかったとしても3歳まで完全除去の必要性についても疑問がのこります。加工食品(たとえば卵ならパンやハンバーグのつなぎなど)であれば食べられる可能性があります。これも、経口負荷試験で確認が必要と考えられます。

Q4アレルギーの検査はいつから出来ますか?

一般的にはいつから出来るという基準はありません。しかし、離乳食が開始される前である生後5ヵ月頃に行われることが多いです。重症のお子様はそれより前に検査することもあります。

Q5食物アレルギーの診断をつけるために、全部食物経口負荷試験を行えばいいのではないですか?  血液検査、皮膚検査の必要性はあるのでしょうか?

確かに、すべての患者さんに経口負荷試験が出来れば理想です。しかしながら、2013年の調査でもアレルギー専門医、日本小児アレルギー学会会員を対象とした調査でも60%は経口負荷試験を実施していません。さらに年間1-10回が約29%を占めており、約90%はアレルギー専門医の資格を持っていても日本小児アレルギー学会会員でも経口負荷試験はほとんどされていないのが現状です。 その理由は、私見ですが前述したアナフィラキシーの危険性があるために人員配置が必要ですが、それに見合う対価がないと考えられるからです。それと比較して血液検査、皮膚検査は危険性がなく簡便なためよく行われます。

Q6完全除去なのか、部分除去なのか、どちらがよいのでしょうか?

食物アレルギー診療ガイドライン2012によると、安全性が確保されることを条件に、必要最小限の除去食が豊かな食生活の維持できるため、安全に摂取出来るならば加工食品などを摂取(部分除去)することを推奨しています。

Q7負荷試験実施施設に掲載されている施設が近くにありません。どうしたらよいでしょうか?

これは、日本小児科学会指導研修施設の小児科を対象としています。たとえば、2013年まで私が勤務していた稲城市立病院は、日本アレルギー認定教育施設でしたが、日本小児科学会指導研修施設ではないため掲載されておりませんでした。また、2013年まで母校の杏林大学は日本小児科学会指導研修施設でしたが、日本アレルギー認定教育施設ではありませんが掲載されています。杏林大学での経口負荷試験は2013年までは私が行っておりました。そのため、当院のようにクリニックで行っている施設もありますので検索してもらうとよいかもしれません。

※尚、これらは一般的に言われていることをまとめただけであり、すべての方にあてはまるわけではありません。実際にはかかりつけ医や専門医に相談することが必要です。 2014/01/31現在の情報をもとに製作しております。随時更新していきます。

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