アレルギー疾患とその他の最新治療
卵黄による消化管アレルギー「食物蛋白誘発胃腸症」
今回は、アレルギーに関して最近、頂く質問です。
うちの子供が、卵黄を食べると嘔吐します。アレルギーなのでしょうか?
非常に難しいご質問です。
近年、日本のみですが、卵黄を食べると嘔吐を主症状とする消化管アレルギーの症例報告が散見されております【報告1】。
従来の鶏卵アレルギーは卵白に強く反応し卵黄の反応は弱い事が通常ですし、嘔吐が主症状とはなりません。しかし、この消化管アレルギーは卵白ではなく主に卵黄に反応し、嘔吐のみが主症状となる特殊な食物アレルギーです。
もしかするとこの疾患に該当するのかもしれません。
近年、日本のみですが、卵黄を食べると嘔吐を主症状とする消化管アレルギーの症例報告が散見されております【報告1】。
従来の鶏卵アレルギーは卵白に強く反応し卵黄の反応は弱い事が通常ですし、嘔吐が主症状とはなりません。しかし、この消化管アレルギーは卵白ではなく主に卵黄に反応し、嘔吐のみが主症状となる特殊な食物アレルギーです。
もしかするとこの疾患に該当するのかもしれません。
最近、増えてきた原因はあるのですか?
原因はよく分かっていませんが、近年は離乳早期に固形物を摂取する事がアレルギーを予防するという報告から、食物を早期摂取していることが1つの原因かもしれないとも考えられています。
また、もともとこの消化管アレルギーはあったけど医療者側が認識してなかった可能性もあります。
赤ちゃんにとって卵黄は消化も遅く、モサモサした感じが合わなくて嘔吐している、と思い込んでいたのかもしれません。
また、もともとこの消化管アレルギーはあったけど医療者側が認識してなかった可能性もあります。
赤ちゃんにとって卵黄は消化も遅く、モサモサした感じが合わなくて嘔吐している、と思い込んでいたのかもしれません。
何かこの病気が分かるための検査はありますか?
この消化管アレルギーの難しいところは、通常のアレルギー検査では検出されない事が前提です【報告2】。
しかし、卵黄による消化管アレルギーでは30%~57.6%検出出来てしまいました【報告2,3】。
通常のアレルギー検査以外では、高額自費の血液検査もありますが、正確な検査方法も確立していないので十分な根拠がありません【報告4】。
様々な検査は他の病気を除外する事には有用です【報告2】。
結論として、検査をしたらといって分かる疾患ではありません。
しかし、卵黄による消化管アレルギーでは30%~57.6%検出出来てしまいました【報告2,3】。
通常のアレルギー検査以外では、高額自費の血液検査もありますが、正確な検査方法も確立していないので十分な根拠がありません【報告4】。
様々な検査は他の病気を除外する事には有用です【報告2】。
結論として、検査をしたらといって分かる疾患ではありません。
では、どうやって診断されるのですか?
米国のガイドライン【報告2】では「詳細で丁寧な問診が重要であり、ほとんどの患者さんはそれだけで診断が出来る」と述べています。
問診だけで明確に出来なかった場合には経口負荷試験が有用としています。
日本のガイドライン【報告4】では問診は「疾患を疑う」レベルにしております。問診で病気を疑った後、除去試験が有用であり、負荷試験はその次と記述されています。
そして、検査も様々なものを挙げていますが十分な根拠はないと記載しております。
即ち卵黄を食べて嘔吐が繰り返され、他の病気、要因が除外されたのであれば、消化管アレルギーと診断されるかもしれません。
問診だけで明確に出来なかった場合には経口負荷試験が有用としています。
日本のガイドライン【報告4】では問診は「疾患を疑う」レベルにしております。問診で病気を疑った後、除去試験が有用であり、負荷試験はその次と記述されています。
そして、検査も様々なものを挙げていますが十分な根拠はないと記載しております。
即ち卵黄を食べて嘔吐が繰り返され、他の病気、要因が除外されたのであれば、消化管アレルギーと診断されるかもしれません。
このアレルギーはどのくらいで治りますか?
固形物では平均3~4年近くで治ると報告されています【報告2】。
先生のところでは、このような患者さんの診療実績はどうですか?
当院で初発、初見の卵黄による消化管アレルギーの患者さんはいらっしゃいませんが、患者さんが御自身で当院を探して受診さられる方を何人も診療しています。
が、そういった方は当院受診までにある程度「数週間~1年」の除去期間を経ており、受診時すでに治癒しているか、本当に消化管アレルギーなのか疑わしい場合も多く、確認のため摂取してもらうと幸いすべての患者さんで症状が消失していました。即ち、この短期間で治癒している事を考えると、本当に消化管アレルギーだったのか、その他の要因による嘔吐だったのかは分かりません。
しかし、子供たちが摂取出来るようになったので保護者の方には喜んで頂き、通院が終了します。
日本では2015-2019年に行われた報告【報告3】しかありませんが、4年10か月の期間で26名の登録がされました。6つの大きな病院(都内大学病院を1つ含む、神奈川県、埼玉県などのかなり大規模な市立病院など)で年間6名弱、すなわち6個の病院で割るので、病院によっては1年に1人も居ない計算になります。これまでの報告からは、頻度は非常に低いものと考えられます。
最後に、この疾患の頻度は不明ですが、非常に稀と考えらます。卵黄による嘔吐があれば、すぐに消化管アレルギーです、と言うわけでは無いことも多いと思います。
まず、その嘔吐の原因を正確に診断する事が重要だと思われます。
が、そういった方は当院受診までにある程度「数週間~1年」の除去期間を経ており、受診時すでに治癒しているか、本当に消化管アレルギーなのか疑わしい場合も多く、確認のため摂取してもらうと幸いすべての患者さんで症状が消失していました。即ち、この短期間で治癒している事を考えると、本当に消化管アレルギーだったのか、その他の要因による嘔吐だったのかは分かりません。
しかし、子供たちが摂取出来るようになったので保護者の方には喜んで頂き、通院が終了します。
日本では2015-2019年に行われた報告【報告3】しかありませんが、4年10か月の期間で26名の登録がされました。6つの大きな病院(都内大学病院を1つ含む、神奈川県、埼玉県などのかなり大規模な市立病院など)で年間6名弱、すなわち6個の病院で割るので、病院によっては1年に1人も居ない計算になります。これまでの報告からは、頻度は非常に低いものと考えられます。
最後に、この疾患の頻度は不明ですが、非常に稀と考えらます。卵黄による嘔吐があれば、すぐに消化管アレルギーです、と言うわけでは無いことも多いと思います。
まず、その嘔吐の原因を正確に診断する事が重要だと思われます。
【報告1】
題名:小児鼻アレルギーに対するCO2レーザー手術症例の検討
雑誌名:日本鼻科学会会誌 45巻2号 177-181 (2006)
【報告2】
題名:小児鼻アレルギーに対するCO2レーザー下甲介粘膜焼灼術
雑誌名:小児耳鼻咽喉科 22巻1号 38-41 (2001)
【報告3】
題名:小児のアレルギー性鼻炎に対するKTPレーザー治療の有用性の検討
雑誌名:小児耳鼻咽喉科 32巻3号 352-359 (2011)
【報告4】
題名:小児スギ花粉症におけるレーザー治療
雑誌名:小児耳鼻咽喉科 22巻1号 34-37 (2001)
【報告5】
題名:Endoscopic laser treatment for pediatric nasal allergy
「小児鼻アレルギーに対する内視鏡レーザー治療」
雑誌名:Diagn Ther Endosc. 2000 6(4):189-92
【報告6】
題名:アレルギー性疾患・花粉症 アレルギー性鼻炎のレーザー治療は子どもにもできますか?何歳から可能ですか?
雑誌名:JOHNS 26巻9号 1412-1413
【報告7】
題名:A review of outcomes following inferior turbinate reduction surgery in children for chronic nasal obstruction.
「小児の慢性鼻閉塞に対する下鼻甲縮小術後の転帰のレビュー」
雑誌名:Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2010 74(1):1-6
2020.3現在の情報であり今後更新は随時行っていきます。
題名:小児鼻アレルギーに対するCO2レーザー手術症例の検討
雑誌名:日本鼻科学会会誌 45巻2号 177-181 (2006)
【報告2】
題名:小児鼻アレルギーに対するCO2レーザー下甲介粘膜焼灼術
雑誌名:小児耳鼻咽喉科 22巻1号 38-41 (2001)
【報告3】
題名:小児のアレルギー性鼻炎に対するKTPレーザー治療の有用性の検討
雑誌名:小児耳鼻咽喉科 32巻3号 352-359 (2011)
【報告4】
題名:小児スギ花粉症におけるレーザー治療
雑誌名:小児耳鼻咽喉科 22巻1号 34-37 (2001)
【報告5】
題名:Endoscopic laser treatment for pediatric nasal allergy
「小児鼻アレルギーに対する内視鏡レーザー治療」
雑誌名:Diagn Ther Endosc. 2000 6(4):189-92
【報告6】
題名:アレルギー性疾患・花粉症 アレルギー性鼻炎のレーザー治療は子どもにもできますか?何歳から可能ですか?
雑誌名:JOHNS 26巻9号 1412-1413
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題名:A review of outcomes following inferior turbinate reduction surgery in children for chronic nasal obstruction.
「小児の慢性鼻閉塞に対する下鼻甲縮小術後の転帰のレビュー」
雑誌名:Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2010 74(1):1-6
2020.3現在の情報であり今後更新は随時行っていきます。
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