アレルギーについて

溶連菌感染症の疑問にお答えします。

以下は他の医療機関で以下のA~Dように指示、診断されてお困りの患者さんが当院に来られる理由で多いものです。当院では以下の質問、不安にちゃんとした明確な答えを持ってそれぞれの患者さんにちゃんと説明をしております。しかし、当院を知り合いの方に紹介されて来院された方はまだ良いのですが、当院のことを知らずにお困りの方はもっとたくさんおられることと思います。そのため今回、患者さんからの疑問で日ごろから多いと感じる質問、不安に対してのお答えを提示したいと思います。

A:1日3回抗生物質を内服するように指示されましたが保育園、幼稚園なので内服できません。どうしたら良いですか?

B:2~4週間後に尿の検査が必要と言われました。でも、ほかの医療機関では必要ないと言われたことがあります。どちらが正しいのでしょうか?

C:何回も溶連菌と診断されています。どうしてでしょうか?

D:扁桃腺を摘出したほうが良いと言われましたが、怖くて…。

まずは、溶連菌についてお話します。溶連菌は喉の痛み、発熱、発疹を引き起こす普通の風邪として発症することもあれば、伝染性膿痂疹(とびひ)などの皮膚に感染症を起こす原因ともなる菌です。 伝染性膿痂疹(とびひ)については当院のページをご覧ください。一般的に多いのは喉の痛みや発熱を引き起こす風邪です。検査は喉から綿棒で拭えば20分ほどで結果が判明します。

Q11日3回の薬をもらいましたが、保育園では内服させてくれませんのでどうしたらよいですか?


これは上記のAの質問の答えになります。当院ではワイドシリンという抗生物質を処方致します。これは米国でも日本でも1日2回で推奨されています。(ただし日本は2~3回と記載され、内服量も米国と異なり、更に2017年までは3回を推奨していました)【報告①~④】ただし、これ以外の場合には1日3回ちゃんと内服させて頂かないといけないものもありますので、その場合にはご相談しましょう。

Q2何歳からかかりますか?

3歳未満は、通常かかることが考えられないのと、溶連菌の合併症を起こすことが稀なので検査されること自体が稀ですが、兄弟間などで強く疑われる場合には検査されます。【報告②.③】

Q3合併症って?

これは質問のBのお答えにもなります。
溶連菌にかかった後、2%未満ですが溶連菌感染後急性糸球体腎炎という腎臓疾患を合併することがあります。そのため、我々小児科医は1~4週間後に尿検査を行い腎疾患合併の確認することが慣例で、国内では92.3%の小児科医が実践していると報告されています。しかし「目のむくみ、目で見える血尿」を保護者によく観察するように指示し症状が出現した時に受診すればよく、全例に尿検査をする必要はないと結論している報告もあります。【報告④】

Q4では、検査しなくて良いですね?



私見ですが、そうではないと考えます。保護者の方が、ちゃんとこどもの「目のむくみ、血尿」を完全にとらえることが出来て、病院に適切な時期に受診できるでしょうか?当院でも目のむくみ、体のむくみを訴えてこられる場合がありますが、腎臓以外でも心臓、アレルギー疾患でもむくみますし、まず診察しても確定は尿検査を行うまで分かりません。またむくみも明らかな場合を除いて非常に判別が困難です。

Q5でも、血尿は見たら分かるんでしょ?

血尿は赤色をしていません。




Q5え??血が出るのに??

一般的に血尿は、コーラ色、麦茶、紅茶色と言われますが、見た目ではよくわからないことも多いです。

現在まで当院では3歳未満のお子さんでは腎臓疾患の合併が稀であるので今までも尿検査をしていませんので、その方々にはちゃんと2週間後の尿の色まで説明しています。 (この尿検査に関して2回検査をされる先生や、ちょうど2週間後ではない先生がおられますが、これはその先生の考え方でありそれに従われることが適切と考えます)

Q6じゃ、結局どうしたら良いのですか?



当院では従来通りで診療方針を変更しません。3歳以上のこどもは尿検査を約2週間後に行って腎疾患の合併確認をした方が患者さんにとって非常にメリットがあり、保護者への負担軽減と安心材料にもつながります。しかし、当院では3歳未満のお子さんでは腎臓疾患の合併が稀であること、排尿が確立しておらず尿検査が簡単に出来ないので、麦茶色の尿と顔がむくむことに気を付けてくださいと従来通りの指示を致します。

ですが、日本国内の小児科医の92.3%が施行する検査、ちゃんと保護者が尿の色を識別出来る(顕微鏡でみないと分からない場合も少なくないが…)、目のむくみが判別できる。以上をちゃんと理解し、最近の報告では症状が出てからの検査で良いのだから、全員の尿検査は必要ないと保護者が考えるなら必要ないのかもしれません。

しかし、医師から十分な説明と保護者の同意が得られたとして、保護者がそのサインを見逃して、腎臓疾患によって高血圧性脳症をきたし、万が一こどもが後遺症を残したらたら「それは保護者の自己責任ですよ」と、私は子供の味方である小児科医の立場から言えませんので検査をお勧めします。もし後遺症を残したら、不利益を被るのはそのこどもです。我々小児科医は病気によってこどもが不利益を被らないようにするための存在です。そのためには、保護者と議論しなければいけないこともあります。

Q7この前治療したのに、溶連菌に何回もかかります。

これは質問Cのお答えになります。

まず、再発は30日以内と定義されます。大体はちゃんと薬が内服できなかったことが原因とされていますが、その他にも色々な原因があり特定は困難です。
再発の場合には最初と違う薬の処方することが一般的です。【報告③】 これとは別に、保菌者と言う状態の方がいます。保菌者とは喉に溶連菌が常在菌として定着するけれども、その本人自身にも他人にもあまり悪さをしない状態のことです。保菌者の割合は3~11%とも報告されています。【報告③】この場合には症状がなくても、いつでも検査すると陽性になります。除菌は非常に難しく、悪さもしないので通常は行われません③。自然に除菌されるまで検査をしながら経過を診ていきましょう。

Q8扁桃腺を摘出すると良いと言われましたが?



これはDのお答えになります。
頻繁な溶連菌感染のためだけに扁桃腺摘出は通常行われません。【報告②.③】短期的な効果(のどの痛みの回数が、最初の1年で摘出した人は3.0回、摘出しなかった人は3.6回)は限定的で1年以上の効果は不明です。特に成人では情報が不十分で結論すら出せないと結論づけました。【報告⑤】

以上、溶連菌は非常に身近でありふれた感染症ですが、この病気ひとつをとってもまだまだ書ききれないことはたくさんあります。これからも当院ではちゃんと、ひとつひとつの疾患について出来るだけ正確で最新の情報を基に診療していきたいと考えております。

尚、府中市、小金井市では登園、登校許可証(書)が必要です。その他の自治体の方は通園通学先でご確認お願いします。抗生物質内服後24時間し、解熱していれば許可証(書)をお書きしますので通園通学先で許可証をもらっておいてください。

①小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2017

②題名:Common Questions About Streptococcal Pharyngitis
(よくある溶連菌の疑問)
雑誌名:Am Fam Physician. 2016 94:24-31

③題名:Clinical practice guideline for the diagnosis and management of group A streptococcal pharyngitis: 2012 update by the Infectious Diseases Society of America
(溶連菌の診断と管理のための臨床実践ガイドライン:米国感染症学会のアップデート2012年版)
雑誌名 Clin Infect Dis. 2012 55:1279-82


④題名:A群溶連菌感染後の尿検査の必要性
雑誌名: 日本小児科学会雑誌 121巻 1161-1165

⑤題名:Tonsillectomy or adenotonsillectomy versus non-surgical treatment for chronic/recurrent acute tonsillitis
(慢性/再発性扁桃炎に対する扁桃 or アデノイド摘除術と非外科的治療との比較)
雑誌名:Paediatr Child Health. 2017 22:94-95

※2018.7現在の情報であり今後更新は随時行っていきます。

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