アレルギーについて

子宮頸がんワクチンのお勧め

今回は子宮頸がんワクチンのお勧めについてお話します。

Q1まず子宮頸がんはとは、どんながんですか?

子宮頸がんは世界185か国の統計において女性では乳がん、大腸がん、肺がんにつぐ4番目に多いがんとなっています。
日本では年間1万879人が子宮頸がんと新規に診断され様々な困難や不自由を強いられており毎年の死亡者数は2887人に上る、がんです。【1】

Q2子宮頸がんの原因は何ですか?

子宮頸がんの99%はヒトパピローマウイルス(以後HPV)が原因とされており、このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染し、性交経験のある女性の50~80%は、一生に一度は感染機会があるといわれています。【2, 3】

Q3なぜ、小児科の先生がこの話題をするのですか?



ご存じかもしれませんが、HPVワクチンは唯一HPV感染を予防し、子宮頸がん発症の予防が可能なワクチンで、接種年齢が小学校6年生~高校1年生だからです。

Q4でも、周りでも受けていませんし、副反応が怖いです…。

まずは、その周りで受けていない理由からお話をしましょう。

HPVワクチンは2013年4月から国内で定期接種として開始され一時期は71.9%の接種率を誇りました。
その後、国内でセンセーショナルな副反応の報告があり2か月半で国は接種勧奨の一時差し控えを行いました。

その後、接種率は0.3~0.4%に落ち込み、2022年の4月から積極的勧奨が再開されましたが現在2~3%程度で推移しております。【3】

Q5みんなが受けていない接種率の低いワクチンを受ける必要はありますか?

子宮頸がんは2021年に行われた世界31か国の調査で日本のみ漸増し、平均年間変動率では日本だけが唯一死亡率、罹患率が増大傾向にあります。

これは、日本のHPVワクチンの極端な低接種率が原因と考えられています。【3】

Q6そうすると、HPVワクチンが子宮頸がんに対して有効性があるという事ですか?

そうです。有効性に関して、スゥエーデンとデンマークは17歳未満で接種した場合、非接種者と比較し子宮頸がんが86~88%減少し、英国では12~13歳で87%、14~16歳で62%、16~18歳で34%に減少したと報告しました。

接種年齢が上がるにつれて予防効果が減少することは、性交渉が済んでいると効果が減弱することを示唆し、英国と米国は20~21歳以上での予防効果には不明瞭~疑問が残る結果と報告しています。【3】

Q7小学生や中学生のような、小さい子供にHPV感染は関係するのでしょうか?

国内のアンケート調査なので正確な信頼性の担保はありませんが1つの参考資料として、17~19歳の男女のうち23.6%は性交渉が済んでおり、その23.6%の中で初めての性交渉を経験した年齢は12歳で3%、13歳3%、14歳5.9%、15歳10.3%、16歳20.7%、17歳27.6%、即ち18歳の成人になる前に全体の16.6%は性交渉の経験があると報告しています。【4】

HPVワクチンは初めての性交渉をする前に接種することが重要なポイントとなりますが、初めての性交渉は成人になってからのお話ではない事が読み取れます。

Q8有効性と早く接種しなければいけない事は分かりました。

安全性はどうでしょうか?
テレビでとても深刻な副反応を観ました。やはり怖いです…。

まず、副反応と言われていたものを説明しましょう。
一番皆さんが懸念されているのは複合性局所疼痛症候群「CRPS」、と言われる「外傷後の全身の痛みや自律神経系の変化、筋肉の異常、皮膚や骨の萎縮、脱毛などを伴う事もある多彩な症状を認め、日常生活に深刻な影響を与える可能性のある疾患」を心配されているのだと思います。
これは、ワクチン接種時の針を刺されたことが「外傷」と認識され起こると言われています。

Q9ではCRPSは起こるのですね?

針を刺すと起こるのかもしれませんが、欧米の報告はこの診断自体が困難であるとし、更にEUの報告ではCRPSは10~19歳の通常の一般集団においても150人/100万人の頻度で発生しており、ワクチン接種をした集団においてCRPSが過少報告された可能性を考慮したとしても、その発生頻度を超えないとし関連性は無いと言及しております。

Q10結局、安全性は、どうなのでしょうか?


安全性に関しては以下の報告を参照しましょう。

WHO、米国、英国、EUから、HPVワクチンは、とても安全だと声明を出しております。

① WHOは、HPVワクチンは全世界で2億7000回分接種されており、そのデータからワクチンは極めて安全で、様々な国から発信された副反応を評価し全ての重篤な有害事象、医学的に問題となる状態、慢性疾患の新たな発症および死亡について接種者と非接種者での差はないと言及しています。【5】

② 米国のCDC「疾病対策予防センター」は、15年以上の監視のもと1億3500万回の接種が行われ、安全かつ効果的かつ長期的なHPV感染防御を提供するという安心させる証拠が蓄積されたと言及しています。【6】

③ 英国のMHRA「医薬品医療製品規制庁」は600万回以上の接種で6例がCRPS疑いで報告されたが、同年齢の自然発生率を大幅に下回っており、ワクチンとの関連性はないと言及しています。【2】

④ 欧州医薬品庁(EMA)は特に踏み込んでCRPSなどの複雑な症状を呈する疾患について評価しHPVワクチンがそのような疾患を引き起こすことを裏付ける証拠はないと言及しています。【7】

Q11安全性も理解しましたが、この時期の女の子は特に多感ですし、接種を怖がっています。


WHOはCRPSとは違いWHOは「接種ストレス関連反応」という、ワクチン接種への不安や注射針への恐怖や痛みなどにより,接種の前後に,過呼吸やめまい,痛み,不随意運動,しびれ,手足の動かしにくさなどを起こす疾患概念に言及しています。
その原因は、色々な生物学的「多感な思春期の女性」、心理学的「痛みへの恐怖やワクチン接種の不安」社会的要因「ネガティブな情報」が複雑に絡み合う反応です。

その予防としては、本人や保護者が心配をしている事象を医療者が緩和し、安心して接種出来る環境を整えてくれる信頼関係があるかかりつけの医での接種も重要なのかもしれません。

Q12では、やはり接種した方が良いのでしょうか?



日本を含む世界が強く安全性について言及している中で、漠然と安全性に不安だという理由で、将来自分の子供の子宮頚がんを予防してくれるHPVワクチンを受けない理由はないと考えます。

そして、私自身、医療者は各国の提言やガイドラインに基づいて医療「ワクチン接種を含む」を提供しており、なんらその提言を疑うものではありません。 不安なことは、かかりつけ医に相談し、安心して接種して頂ければと思います。

参考文献
【1】がん情報サービス 国立がん研究センター

【2】Cervarix HPV vaccine: update on UK safety experience at end of 4  years use in the HPV routine immunisation programme  December 2012 MHRA PUBLIC ASSESSMENT REPORT「英国医薬品医療製品規制庁」

【3】HPVワクチン推進を目指して 日本医師会雑誌

【4】第39回18歳意識調査「テーマ:性行為」報告書
日本財団 2021年7月28日


【5】Safety of HPV vaccines
WHO:世界保健機構


【6】CDC:疾病対策予防センター

【7】HPV vaccines: EMA confirms evidence does not support that they cause CRPS or POTS EMA:欧州医薬品庁

【2023.08現在の情報であり今後更新は随時行っていきます。】

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