アレルギーについて

長引く咳について

今回は、長引く咳についてのお話です。

Q1えっ??咳ですか??

はい、咳です。長引いている咳でお困りの方は多く、当院はアレルギー科ですので喘息を心配されて受診される場合があります。
まず、小児の長引く咳の定義からですが、海外では通常4週間以上を慢性と定義し【報告1】それに基づいて治療研究を行います。「日本は別です…」【報告2】

Q2うちの子供はずっと咳が続いており、他の医療機関を受診しましたが良くなりません。喘息でしょうか?

その咳は確率論的には風邪の延長である事が多いです。



Q3こんなに長引いているのに??風邪ですか??



はい、そうですね。皆さん驚かれますが、実際はほとんど風邪の延長です。「延長」の正体は後で明らかにしましょう。では実際、風邪の咳はどのくらい続くと思いますか?

Q4え~と、だいたい1週間、長くて10日くらいでしょうか?

以下の【報告3】は風邪「上気道炎」と診断された人「小児~成人を対象」の咳がどのくらい持続したかを調査しました。
咳が2週間以上持続した人は78%、3週間以上は58%、4週間以上は35%、5週間以上は17%、6週間以上の人は8%でした。平均は2.4週間、中央値2.0週間「治った人が一番多かった週」でした。

すなわち風邪の咳は半分の人が2週間持続し、1/3以上は4週間以上続くことが分かりました。

Q5では、うちの子は風邪ですか?

それは、診察しないとわかりません。

胸の音はどうなのか、どのような咳が出ているのか、咳はいつ出やすいのか、どんな時に出るのか、いままでの薬への反応はどうだったか、家族で喫煙者は居るのか、ペットは居るのか、集団保育児なのか、それはいつから通園しているのか、など様々な事を伺い診察してから診断、検査「必要があれば」、治療「必要があれば」が行われます。

Q6この「必要があれば」と言うのは?

特に長引く咳ですと保護者の方は心配されてアレルギー、その他の血液検査をしてほしいと訴えられることが多いですが、お話をお伺いし診察して必要が無ければ、検査は通常行いません。

また、治療する必要のない咳もあります。覚醒しているときは咳が出るが、就寝中には全く咳が出ない事で診断がつく心因性の咳などです。

Q7では、その診察と必要であれば行われる検査で診断名がついて、治療がされるのですね?


はい。しかし、実際はその診察で病気に直接結びつけられる特徴的な所見「例えば喘息ならゼイゼイしているなど」が無いことがほとんどであり、診断はつかない事が多いです。その場合、4週間以上続く咳のほとんどは抗生物質の投与によって咳が改善する遷延性細菌性気管支炎と言われる病気であることが報告されており【報告4】、世界のガイドライン等【報告1.5】もこれに基づき抗生剤投与を提案します。これが長引く咳の正体である風邪の延長「遷延性細菌性気管支炎」です。

Q8では、子供の咳が4週間以上長引いているならば、かかりつけの先生に直ぐに抗生剤を貰った方が良いですね?

ちょっとお待ちください。

その咳ですが、特に入園したばかりや低年齢の集団保育時児は風邪が治る前に繰り返し新しい風邪をひくことで咳が長引いている場合が多いのです。

その場合、上述の基準によれば4週間おきに抗生物質を飲むことになりますが、そうすると最大で年12回も抗生剤内服することになります。それは適切とは考えられないので、かかりつけ医とご相談ください。

【報告1】Chronic Cough: Evaluation and Management
慢性咳嗽: 評価と管理
【報告2】小児の咳嗽診療ガイドライン2020
【報告3】Duration of cough in acute upper respiratory tract infections
急性上気道感染症における咳の持続時間
【報告4】Evaluation and outcome of young children with chronic cough
慢性咳嗽のある幼児の評価と転帰
【報告5】Antibiotics for prolonged wet cough in children (Review)
小児の湿性咳嗽が長引く場合の抗生物質 (レビュー)

【2024.03現在の情報であり今後更新は随時行っていきます。】

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